大津市「市民センター機能等のあり方実施案」に対する自治連特別委員会見解について

9月21日(土)に開催された自治連定例会において、自治連合会のあり方を改革する委員会(自治連特別委員会)より『大津市「市民センター機能等のあり方実施案』に対する本委員会の見解」として添付のとおり報告がありました。 全文のPDFファイルは最下段からダウンロード可能です。

前文より

本委員会は、自治連合会のあり方に関する改革案を提案するために設置された特別委員会である。しかし、今般、大津市が提案している市民センターの改革案は、本委員会における検討作業への関わりが大きいので、これに対する見解をまとめることになった。

そこで、標記実施案(「広報 おおつ」2019年3月15日)と、勉強会「大津市の考えるコミュニティセンターについて」(6月19日)ならびに「市民センター機能等のあり方実施案学区説明会」(6月30日)における質疑を踏まえて、とくにコミュニティセンター化と新自治組織となる「まちづくり協議会」に焦点を置いて、既存組織や活動との関連にも注目しつつ、検討作業を行った。その結果、本文で示すように、少なくない理由と根拠をもとに、本委員会は同実施案に対して「強く、深い懸念」を抱くに至り、その旨を自治連合会役員会に答申することとした。

今後、自治連合会において然るべき対応が取られることを期待する。なお、この市民センター改革案に関して大津市によって開催された日吉台学区における三度の会合(2018年9月3日、2019年6月19日、6月30日)に於いて、参加者から多くの疑問や反対意見が出されていたことも記しておきたい。本答申は委員会での議論のみならず、こうした説明会での意見も取り入れたために、やや長文になった。

主な内容

1) 市民センターの位置づけ、その機能と役割

① 市民センター機能のさらなる充実が求められている

四つの機能(支所機能、公民館、地域自治、防災)を担う市民センターの位置と役割について、少子高齢化など地域の社会環境の構造的な変化に対応するには、むしろ充実が求められている。

② ところが支所機能の合理化、行政サービスの削減が進行している

既に今年度から職員の配置は減員され、支所業務の見直し、窓口時間の縮減などによって混雑現象が生まれている。高齢者など社会的弱者にとってその負担が大きくなることは避けられない。

③ コミュニティセンター化に伴い、大津市の権限と責任も解除されることになる

2025年度以降は、市職員の配置を止め、行政サービスが縮減されるに留まらず、大津市がそこで担ってきた行政上の権限と責任も日常的に解除されることになる。住民に近い地域の現場に行政との接点が必要、といった住民の要望とは逆行している。

2) コミュニティセンターの位置づけと問題点

① コミュニティセンターの趣旨と概要

当初は大津市の直営でスタートするが、5年間のうちに指定管理者制度によって、地域による自主運営に移行するとしている。 大津市は指定管理料314万円を支払うとしているが、地域に課される負担を考慮すると、総額としては低すぎる。

② 一括交付金による大津市の助成は、未だに制度設計段階

助成金の一括交付は、よほどの増額措置が取られるのでもない限り、200万程度(当特別委推定)の交付金をめぐって、各種団体による既得権の主張や予算配分をめぐる相克を起こすことになりかねない。

③ コミュニティセンターの利用をめぐって

日吉台に22団体ある利用者団体は、コミュニティセンターの場合、大津市は「利用者団体については地域還元活動とそれによる減免は一旦廃止し、利用料金を徴収することになる」と述べている。

④ コミュニティセンターの運営と運営主体としての「まちづくり協議会」の課題

コミュニティセンターは施設利用料の徴収や事業収入など自主的に事業展開を行えるとしているが、当然、指定管理者である「まちづくり協議会」にはその経営責任が問われる。 スタッフを含む人事管理(労務管理、ハラスメント対応、昇給、ボーナスなど)をはじめ、「まちづくり協議会」が組織運営全体の管理責任を果たしていくことは容易でない。

⑤ 防災機能について

市職員が不在となり、災害緊急時の初期対応が遅れることが懸念される。 指定管理を受けるコミュニティセンターが防災機能も受け継ぐとしているが、移管後の防災機能のあり方は明確とは言い切れない。

3) 新自治組織「まちづくり協議会」の設置提案をめぐる疑問点や問題点

① コミュニティセンターの指定管理者としての「まちづくり協議会」とは?

大津市は、コミュニティセンターの運営を行う指定管理者として、「まちづくり協議会」の設立を予定しているが、この「まちづくり協議会」は新たな地域自治組織として、全員が会員でなくても良いが、地域住民全員を対象にして活動(全住民対象の公共サービスを含む)を行い、全住民がこの活動に参加できることが要件になるとしている。

② 持続性をもつ組織として「まちづくり協議会」は可能か?

日吉台の年齢構成を考えると、「まちづくり協議会」を設立できないとか、立ち上げても数年後に組織維持が困難になる可能性は否定できず、同協議会が健全かつ安定的に組織され、持続的に活動を継続できる保証はない。 また、この構想は、あくまでも地域の自発的な取り組みに依拠するものであるから、地域によって異なる姿で多様に登場しても構わないのか、という基本問題もある。
さらに、利用許可など運営の最終責任を各地域のまちづくり協議会が負うということになるという懸念がある。

③ 新たな自治組織「まちづくり協議会」の設置は地域活動の二重組織化による負担の増加をもたらすことに

現状の自治会や連合自治会などの活動とならんだ事実上の二重組織になる。 また、権限の階層化により、地域の自治組織、自治会や連合自治会の総合性や一体性が失われ、部分的な機能に縮減されることになり、住民自治の基本原点を見失うことになりかねない。

④ 自治会の加入率は低下することに?

新たな自治組織「まちづくり協議会」は全住民を受益対象とする一方で、特に非自治会員の場合は何の責務も負わないで済むことになる。この場合、既存の自治会等はますます加入率が低下するという懸念がある。

⑤ 各種団体などとの「まちづくり協議会」での連携や協力は進展するのか?

各種団体は独自組織として手続きを含めてこれまでの自立的な運営を行いながら、一方で「まちづくり協議会」に参画し、そこでの討議を踏まえて全体の合意にしていく、という手続きが新たに付け加わることになる。

 

全文のPDFファイルはこちらからご覧ください

尚、本見解は2019年6月30日現在の市からの情報に基づくものです。