去る5月24日(土)午後2時より大津市・唐崎市民センターにて、日吉台・仰木・上田上の三学区共同のシンポジウム「幼保問題とまちづくり」(主催:おおつ幼保一体化推進協議会、協賛:日吉台まちづくり協議会、仰木学区教育振興会、上田上教育を考える会)が開催されました。各地域から合計50名ほどの聴衆が集まり、日吉台からも20名近くの方々に参加していただきました。日吉台まちづくり協議会のメンバーも会場ボランティアに駆けつけ、準備と会場運営に携わりました。
最初に主催団体の会長である武田平吾議員(大津市会議員)より開会のあいさつがあり、「おおつ幼保一体化推進協議会」の設立の経緯と今回のシンポジウムの主旨説明がありました。来賓の横田好雄市会議員と中野治郎市会議員からも、地域から選ばれた議員として幼保問題にかける意気込みが語られました。
三学区の現状報告では、伝統ある農村地域の仰木学区と上田上学区から、地域内の少子高齢化と幼稚園児減少の深刻な状況と、地域において幼児教育施設が果たしている重要性が報告されました。また、日吉台の浜崎自治連合会会長より、新興住宅地で猛烈な勢いで進んでいる少子高齢化の現状と、その対策として昨年度の「日吉台まちづくり協議会」を設置し、さらに今年度から「日吉台まちづくり推進委員会」を設置した目的が説明されました。さらに、日吉台自治連合会として5月初旬に幼児教育施設の存続を議会に求める署名活動をおこなったことが報告されました。
メイン講演では、まず井上久美先生(関西福祉大学)より「子どもの視点からみた『新幼保連携型認定こども園』」と題された講演がおこなわれました。はじめに2015年度より「子ども・子育て支援新制度」が施行されるのにあわせて「認定こども園」の普及が目指されるようになった経緯が紹介され、幼稚園と保育園という二種類の施設が一体化した認定こども園には、子どもにも保護者にもさまざまなメリットがあると説明されました。しかし、政府の「認定こども園」推進政策の背後には、経済効率性や市場開拓といった経済的意図が見え隠れしており、教育施設としての本来の目的がうやむやになっていることや、学力偏重の歪んだ幼児教育がおこなわれる懸念があることが指摘されました。最後に、ほんとうに重要なことは、幼児教育が誰のためにあるのかをよく考えて、けっして大人たちの都合で幼児教育施設を考えるのではなく、「子どもの視点を忘れないこと」なのだ、と強調されました。
続く水野博達先生(大阪市立大学)は、少子高齢化とまちづくりを主題にして講演しました。現在の日本で進む少子高齢化にかんする調査結果をもとに、多くの地域で出産可能年齢の女性が激減しており、このままでは多くの地域が消滅する可能性があることが示されました。さらに、この現象は戦後の経済成長政策の歪んだあり方の結果であり、私たちの価値観や生活のあり方が根本的に問われていることが指摘され、そこから幼児教育の問題と高齢者施設の問題を分けて考えるのではなく「幼・老施設問題」としてセットで考えることが必要であり、それはますます負担が重くのしかかる勤労世帯の生活を支えることにつながると主張されました。
その後の質疑応答では、会場から絶えず質問が繰り出され、熱心な議論が交わされたため、すべてのプログラムが終了したときには、すでに予定時間を大幅に超えて午後4時半になっていました。これからも機会があれば、日吉台まちづくり協議会でもこうした市民向けの公開企画をしていければと思います。
文責 村澤真保呂(おおつ幼保一体化推進協議会事務局長)
補足:当日に配布ミスがあった井上先生の発表資料(PDF)はここからダウンロード